日経は難しい?
「若者の活字離れ」と言われることがあります。私はもう30代なので若者の括りからは外れそうな勢いですが、漫画と共に育ってきた我々にとって、文字だけを読むのってちょっと敷居が高いですよね。
ではなぜ活字を読むのは難しいのか?それは、文字を読むことそのもの以上に、書いてある内容に対する前提知識が不足していることが原因です。極端な話ですが、いくら平易な内容であってもアラビア語で書いてある文章は読めないですよね。それはアラビア語に対する知識が不足していることが原因です。また、自分が興味のある内容であれば、スラスラ読めたりしますよね?好きな子のSNSの投稿とか、多少長くても頭にすっと入ってくるはずです。
以上より、日経を読もうと息巻いたのに、ちょっと読んだら
となってしまうのは、「活字が苦手だから」ではありません。単純に書いてある記事の前提知識が足りていないだけです。
かく言う私も、ぶっちゃけ日経読んでて理解できないことの方が多いです。そこで、日経の記事に書かれている内容の前提知識をぶたくん、くまくんと一緒に整理し、スラスラと日経を読めるようになっていきましょー!
今日の解説記事
東京ディズニー、クルーズ事業参入
東京ディズニー、クルーズ事業参入 3300億円投資 – 日本経済新聞 (nikkei.com)
ニュースの要約
- 東京ディズニーリゾート(TDR)を運営するオリエンタルランド(OLC)は9日、クルーズ事業に参入すると発表した。
- 事業費は約3300億円で、2028年度に就航する。
- 首都圏の港を発着する2~4泊の短期周遊クルーズを中心に運航する。
- 日本船籍では最大級となる総トン数が約14万トンのクルーズ船を建造する。
- 数年後には売上高約1000億円を目指す。
こちらが公式Youtubeの紹介動画になります!ちなみに動画で流れているクルーズの映像は、その外観等から、米国Disney系列で運営されている「ディズニー・クルーズ・ライン」の「ディズニードリーム」と推定されます。
それではこのニュースについて、基礎知識やその背景にあるものは何なのか、一緒に考えていきましょう!
オリエンタルランドの業績
会社の業績を確かめる方法
会社の業績が好調か不調か、それを確かめるためには「財務諸表」を使います。中でも投資家が投資判断をするにあたって重要視されるのは、利益情報であり、当該情報は主に「損益計算書」という書類に記載されています。
いわゆる上場企業については、金融商品取引法により有価証券報告書を作成、提出しなければなりません。有価証券報告書に、財務諸表も含まれています。多くの会社では投資情報として有価証券報告書をホームページ等に開示しておりますので、誰でも簡単に見ることが出来ます。
そこで、オリエンタルランドの利益情報を見てみましょう!
財務情報から読み解くオリエンタルランドの業績
株式会社オリエンタルランドの2024年3月期の連結損益計算書は下記のようになっております。
(表記方法:2023年3月期数値→2024年3月期数値。単位は百万円。)
財務データダウンロード | 業績・財務情報 | 株主・投資家の皆様へ | 株式会社オリエンタルランド (olc.co.jp)
- 売上高:483,123→618,493
- 営業利益:111,199→165,437
- 親会社株主に帰属する当期純利益:80,734→120,225
売上高が約28%伸び、営業利益も純利益も大幅に増加しています。増加の要因としては、
東京ディズニーリゾート40周年イベントなどが好評であったことなどから、テーマパークの入園者数およびゲスト1人当たり売上高が増加いたしました。また、訪日外国人旅行者数の回復に伴い、テーマパークにおける海外ゲスト数も増加いたしました。その結果、売上高、営業利益、経常利益、親会社株主に帰属する当期純利益はいずれも過去最高でした。
ディズニー・プレミアアクセスの増、変動価格制による高価格帯チケット構成比の増、東京ディズニーリゾート40周年関連商品やメニュー・フードスーベニアの販売も好調だったため、売上高が増加しました。
業績ハイライト | 業績・財務情報 | 株主・投資家の皆様へ | 株式会社オリエンタルランド (olc.co.jp)
とされています。チケットの価格が上がっても訪日外国人の増加により客足もそれほど減ることはなく、結果として売上高も利益も増加したようです。過去最高だったとのことで、オリエンタルランドの業績は絶好調と言えそうです。
また、上記数値を更にセグメント(業種)ごとに細分化すると下記の通りになります。
売上高を金額で示すと下記の通りになります。
参考:セグメント情報 | 業績・財務情報 | 株主・投資家の皆様へ | 株式会社オリエンタルランド (olc.co.jp)
- テーマパーク事業:5,137億円
- ホテル事業:883億円
- その他の事業:163億円
本日のニュースではクルーズ事業で売上高約1000億円を目指すとの記載がありますので、現状のホテル事業を超える規模の収益を目指すということになります。
目標とする売上規模がわかったところで、ニュースに記載されているその他の数字についてもう少し具体的なイメージをつけていきましょう。
ディズニーが目指すクルーズ事業を具体的にイメージする
事業費約3300億円てどれだけの規模?
ニュース内では、オリエンタルランドがクルーズ事業に掛ける費用は約3300億円とされています。これは一体どれほどのモノなのでしょうか。
例えば、ディズニーランドのアトラクションと比較すると、2020年に開業した「美女と野獣“魔法のものがたり”」の総工費が約320億円とされています。これと比較すると、美女と野獣約10基分ということになりますね!これだけあれば行列も緩和されてスムーズに乗れそうですね(笑)
また、ホテルミラコスタを含む東京ディズニーシーの総事業費が約3,350億円ということなので、物価や為替の状況も違うため単純比較はできませんが、ディズニーシーをもう一つ作る規模ということになります。これは非常に大きな投資になりそうです。
14万トンのクルーズ船とは?
ニュースの中では約14万トンのクルーズ船を建造するとされています。では14万トンの船ってどんな大きさなのでしょうか?
比較のために、現在の日本船籍最大のクルーズとして有名な飛鳥Ⅱは、総トン数50,444トンです。単純計算で飛鳥Ⅱの約3倍ということですから、凄まじい大きさですね。
トン数の近いもので検索したところ、下記のリーガル・プリンセスが約14万トンでした。全長330mで乗客と乗組員合わせて4,906人が乗れるとのことで、もはや動く集落というレベルです。
なぜオリエンタルランドはクルーズ事業に乗り出したか?
今回の新事業発表について、背景にあるのは下記の記事が参考になります。
OLCの積年の課題が舞浜への依存度の高さだ(中略)効率的に運営できる面もあるが、一極集中のリスクは大きい。これまでも舞浜の外で新規事業を模索する動きはあった。
東京ディズニーリゾートのオリエンタルランド、脱・舞浜依存へ出航 28年度にクルーズ – 日本経済新聞 (nikkei.com)
先ほど財務数値を見たように、オリエンタルランドの収益の大部分は舞浜エリアを中心としたテーマパークから生み出されています。しかしながらこれらのテーマパークは埋立地に建設したテーマパークであり、
今回のファンタジースプリングス開業で舞浜地区での拡張余地はほぼなくなると見られる。
ディズニーシーに新エリア…今後の拡張は?、新会長の答え|ニュースイッチ by 日刊工業新聞社 (newswitch.jp)
とされるなど、これ以上の拡張は難しいという見方もあるようです。そこで、更なる収益獲得のために、舞浜エリアの拡張を必要としないクルーズ事業に乗り出した、ということです。
まとめ
今回の解説のまとめは下記の通りです。
- オリエンタルランドの業績は絶好調
- 東京ディズニーシーの総工費に匹敵する事業費を投じ、現状のホテル事業を超える収益を目指す
- 舞浜依存の状況ではこれ以上の収益拡大を目指すことは難しいと考えられ、リスク回避及び収益拡大のために、OLCはクルーズ事業という大海原へ乗り出す
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