日経は難しい?
「若者の活字離れ」と言われることがあります。私はもう30代なので若者の括りからは外れそうな勢いですが、漫画と共に育ってきた我々にとって、文字だけを読むのってちょっと敷居が高いですよね。
ではなぜ活字を読むのは難しいのか?それは、文字を読むことそのもの以上に、書いてある内容に対する前提知識が不足していることが原因です。極端な話ですが、いくら平易な内容であってもアラビア語で書いてある文章は読めないですよね。それはアラビア語に対する知識が不足していることが原因です。また、自分が興味のある内容であれば、スラスラ読めたりしますよね?好きな子のSNSの投稿とか、多少長くても頭にすっと入ってくるはずです。
以上より、日経を読もうと息巻いたのに、ちょっと読んだら
となってしまうのは、「活字が苦手だから」ではありません。単純に書いてある記事の前提知識が足りていないだけです。
かく言う私も、ぶっちゃけ日経読んでて理解できないことの方が多いです。そこで、日経の記事に書かれている内容の前提知識をぶたくん、くまくんと一緒に整理し、スラスラと日経を読めるようになっていきましょー!
今日の解説記事
光技術の海外展開支援
光技術の海外展開支援 政府、通信装置の試験など補助 – 日本経済新聞 (nikkei.com)
ニュースの要約
- 総務省は光の高速通信技術で海外展開を支援する。
- 世界の電力消費の急増に対して、光電融合技術には「通信の遅延を小さく」「消費電力を大幅に抑える」利点がある
- 日本が強みを持つ技術で世界市場を開拓し、競争力を高める狙い
光の高速通信技術とは?
光電融合技術の概要
まず見出しにある「光技術」ですが、これは蛍光灯をさらに明るくする!とかそういう、照明器具の話ではありません。記事にもあるように、通信技術の話です。この光技術について、開発を進めるNTTのHPには下記の説明があります。
データセンターの消費電力問題を救う技術として注目を集めているのが「光電融合技術(こうでんゆうごうぎじゅつ)」です。これは電気信号を扱う回路と光信号を扱う回路を融合する技術のこと。
世界的な電力不足を救う?注目を集める「光電融合技術」とは | NTT STORY | NTT (group.ntt)
そして光電融合技術のメリットについて、
これまで電気で行なっていた計算を、光を用いた処理に置き換える研究が進められています。つまり、コンピューターの内部回路を、できるだけ電気を使わず光でつなぐことを目指し、省電力かつ低遅延を実現させる研究です。光には電気に比べてエネルギー消費が小さく、遅延も起きにくいという大きなメリットがあります。エネルギーの無駄遣いや処理の遅れを大幅に減らすことができるのです。
(中略)光電融合技術の普及によって、2030年までに現在の最先端データセンターと比較しても、40パーセント以上の省エネが実現すると言われています。
世界的な電力不足を救う?注目を集める「光電融合技術」とは | NTT STORY | NTT (group.ntt)
半導体等の回路は、普段目にすることがないため少々イメージがつかず分かりづらいと思いますが、とにかくここでは「光電融合技術を使うことで低遅延かつ省電力が実現できる」ということを覚えておいてください。
それでは次に、光電融合技術を取り巻く産業界の環境について解説していきます。
IOWNってなに?
ここ半年くらいで頻繁に経済ニュースにも出てくる言葉なので、既にご存じの方もいるかと思いますが、
IOWN(アイオン)構想とは、NTTが2019年5月に発表した、ICTインフラ基盤構想である。従来の電子技術(エレクトロニクス)から光技術(フォトニクス)にシフトし、より「低遅延」「低消費電力」「大容量・高品質」のネットワークを実現しようというものだ。
「IOWN構想」とは何か? NTT“次世代戦略”と参加企業をわかりやすく解説 |ビジネス+IT (sbbit.jp)
元来、IOWN自体は構想であり、”iモード”や”FOMA”のような、NTTが提供する商品名とかサービス名称ではありません。ただ、少しややこしいのですが、下記の通り、サービス名称にもその単語が使われています。
IOWN構想の実現に向けた初めての商用サービスとして、通信ネットワークの全区間で光波長を専有するオールフォトニクス・ネットワーク(All-Photonics Network、以下、APN) IOWN1.0を2023年3月16日(木)に提供開始いたします。
APN IOWN1.0の提供開始について | お知らせ・報道発表 | 企業情報 | NTT東日本 (ntt-east.co.jp)
そのため、これは厳密ではないのですが、「IOWN」というワードを聞いたときはとりあえず「NTTが主体となって進めている、光技術(ないし光電融合技術)を用いたネットワークの低遅延・省電力化を目指す構想又は当該構想を目指すためのサービス」みたいな理解で十分です。
4Gとか5Gとか騒がれてるけど、これって誰が決めてるの?
記事の中に下記の記載があります。
光電融合技術は(中略)次世代通信規格「6G」をにらみ、通信で世界が直面する課題を解決する技術として注目を集める。
光技術の海外展開支援 政府、通信装置の試験など補助 – 日本経済新聞 (nikkei.com)
ここで出てきた「6G」について。最近のニュースとかでたまに聞きますよね、「4Gがどーのこーの、5Gで通信速度が速くなって云々」とか。ちょっと前のスマホとかだと、画面上部のアンテナに”3G”とか”4G”とか出てましたね。
ここで疑問に思いませんか、「この技術が4G。これは5G」とかって、誰が決めてるんでしょうか?技術は日進月歩で進化しているのに、いったいどうやって線引きをしているのでしょうか?
〇Gの概要
Gは”generation”のイニシャルです。そして日本語に訳すと、〇Gは「第〇世代移動通信システム」となります。ちなみに「移動通信」というのは、読んで字のごとくですが
携帯電話・PHSやノートパソコンなど可搬性に優れた端末による、外出先でも利用可能な通信の総称
移動体通信(いどうたいつうしん)とは? 意味・読み方・使い方をわかりやすく解説 – goo国語辞書
のことです。
〇Gの歴史
現在商用利用されている最も新しい世代は「5G」です。…というからには、1Gから4Gもあります。一体どんな変遷を辿ってきたのでしょうか?
総務省|令和2年版 情報通信白書|移動通信システムの進化とその影響 (soumu.go.jp)
- 1G(1979年~)日本電信電話公社(当時)は民間用としては世界で初めてセルラー方式による自動車電話サービスを開始した。
- 2G(1993年~)アナログ方式に代わってデジタル方式によるサービスが開始された。
- 3G(2001年~)3Gの特徴は、アクセス方式にCDMA(符号分割多元接続)を採用している点にある。
- 4G(2010年~)LTEのさらなる高速化のために策定された規格がLTE-Advancedである。
- 5G(2020年~)超高速通信(eMBB)、超低遅延通信(URLLC)、多数同時接続(mMTC)
こうしてみるとなんとなく連続しているように見えますが、実は2G以前と3G以後は性質の違うものになります。
2Gでは国・地域毎に異なる移動通信システムを導入していたため、日本国内で購入した端末が米国や欧州では利用できないといった状況にあった。そのため、第3世代移動通信システム(3G)の仕様の策定に際しては、「全世界で同じ端末を使えること」を目標に標準化作業が進められ、1999年に国際電気通信連合(ITU)において、「IMT-2000」として複数の技術方式が標準化された。
総務省|令和2年版 情報通信白書|移動通信システムの進化とその影響 (soumu.go.jp)
そして下記の通り、3G以降の世代についても同様にITUによって制定されています。
一般的に「3G」「4G」「5G」と言われるものは、国際電気通信連合(ITU)が定める規格に準拠した移動通信システムの名称です。
《移動通信システム》3G/4G/5Gの違いをスッキリ整理 | アイアール技術者教育研究所 (engineer-education.com)
〇Gを決めているのは
以上より、「誰が決めているの?」という問いの答えについては「ITU」ということになります。ちなみにITUは国連の機関です。
ITUによる移動通信システムの勧告に至るまでは様々なプロセスがあるのですが、少々今回の記事内容から外れすぎるのと、分量も多くなってしまうため割愛します。気になる方は下記をご覧ください。
3GPPにおける5G標準化の最前線 | 標準化 | スマートグリッドフォーラム (impress.co.jp)
6Gの標準化はまだ検討段階である
先ほども言った通り、現状商用利用されている内最も新しい世代は5Gです。そして5Gの次世代となる通信規格については、「6G」とか「Beyond 5G」とか呼ばれていて、まだ検討段階です。
現在、IMTの検討を所掌するWorking Party 5D(WP 5D)において、いわゆる”6G”を念頭に置いて、2030年及びそれ以降のIMTの呼称である”IMT-2030”の無線インタフェースの標準化に向けた検討を行っている
000923880.pdf (soumu.go.jp)
すこし分かりにくいですが、ITUとしては2030年に6Gの標準化を勧告しようというスケジュールになっています。
国が光の高速通信技術を支援する背景
前述の通り、〇Gは技術の国際標準化を表しています。すなわち、ある企業の技術が国際標準となれば、その企業は世界の移動通信において覇権を握ることが出来るのです。
この点、既に商用利用が進んでいる5Gについて、日本は世界に後れを取りました。
日本の大手携帯キャリア3社がこぞって5G(第5世代通信システム)の商用サービスを始めたのは2020年3月。(中略)日本としては予定通りの展開だったが、そのおよそ1年前に韓国と米国がそれぞれ「世界初」を競って華々しく商用サービスを開始しただけに、「日本は世界に1年遅れている」というレッテルを貼られてしまった。
日本のBeyond 5G/6Gは遅れている? 進んでいる? – 日経クロステック EXPO 2021…:日経クロステック EXPO 2021 (nikkeibp.co.jp)
そこで、5Gで後れを取った悔しさをバネに、次世代である6Gについては先進的に開発を進め、日本企業であるNTTの技術により覇権を取ろうとしていると考えられます。実際、光電融合技術については下記のような状況であり、NTTは既に光電融合技術を利用したサービスを開始していますから、国際標準化できる可能性は十分にあると言えそうです。
光デバイスや光電融合デバイスの分野は世界的に先端的な分野です。研究者の数もまだ少ないのですが、逆に世界をリードしていくことができるチャンスでもあります。
光デバイス・光電融合デバイスで世界をリード。自分たちの技術を宣伝して、仲間を増やしていく | NTT R&D Website (rd.ntt)
まとめ
今回の解説のまとめは下記の通りです。
- 光電融合技術で、通信における低遅延・省電力化が実現できる
- 我らがNTTはIOWN構想の一環として光電融合技術を用いたサービスの提供を既に開始している
- 5Gで後れを取った日本は、6Gにおいて日本の光電融合技術を世界標準化することを目指し、当該技術の海外展開を支援する
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