日経は難しい?
「若者の活字離れ」と言われることがあります。私はもう30代なので若者の括りからは外れそうな勢いですが、漫画と共に育ってきた我々にとって、文字だけを読むのってちょっと敷居が高いですよね。
ではなぜ活字を読むのは難しいのか?それは、文字を読むことそのもの以上に、書いてある内容に対する前提知識が不足していることが原因です。極端な話ですが、いくら平易な内容であってもアラビア語で書いてある文章は読めないですよね。それはアラビア語に対する知識が不足していることが原因です。また、自分が興味のある内容であれば、スラスラ読めたりしますよね?好きな子のSNSの投稿とか、多少長くても頭にすっと入ってくるはずです。
以上より、日経を読もうと息巻いたのに、ちょっと読んだら
となってしまうのは、「活字が苦手だから」ではありません。単純に書いてある記事の前提知識が足りていないだけです。
かく言う私も、ぶっちゃけ日経読んでて理解できないことの方が多いです。そこで、日経の記事に書かれている内容の前提知識をぶたくん、くまくんと一緒に整理し、スラスラと日経を読めるようになっていきましょー!
今日の解説記事
配車アプリ新興「ニューモ」、タクシー会社を買収
配車アプリ新興「ニューモ」、タクシー会社を買収 ライドシェアに新陣営 – 日本経済新聞 (nikkei.com)
記事の要約
- アプリ開発スタートアップのnewmoが大阪のタクシー会社未来都を買収した。
- ニューモが出資する別のタクシー会社と共同でライドシェアサービスを展開する予定。
それではこの記事についてその背景にあるものを詳しく、分かりやすく解説していきます!
ライドシェアとは?
非常に大きなニュースにもなったのでご存じの方も多いと思いますが、改めてライドシェアとは何ぞや?について説明していきます。
自家用車活用事業(日本版ライドシェア)とは
国土交通省が指定したタクシーが不足している地域、時期、時間帯と不足車両数に対し、その不足分を補うため、タクシー事業者が管理する地域の自家用車・一般ドライバーが有償で運送サービスを提供するものです(道路運送法第78条第3号に基づく国土交通大臣許可事業)。
自家用車活用事業(日本版ライドシェア)について/千葉県 (chiba.lg.jp)
これだけだと解りにくいので、補足説明を加えます。
道路運送法78条3号とは?
条文は下記の通りです
第七十八条 自家用自動車(事業用自動車以外の自動車をいう。以下同じ。)は、次に掲げる場合を除き、有償で運送の用に供してはならない。
一 災害のため緊急を要するとき。
二 市町村、特定非営利活動促進法(平成十年法律第七号)第二条第二項に規定する特定非営利活動法人その他国土交通省令で定める者が、次条の規定により地域住民又は観光旅客その他の当該地域を来訪する者の運送その他の国土交通省令で定める旅客の運送(以下「自家用有償旅客運送」という。)を行うとき。
三 公共の福祉を確保するためやむを得ない場合において、国土交通大臣の許可を受けて地域又は期間を限定して運送の用に供するとき。
道路運送法 | e-Gov法令検索
法律の文章って読みづらいし分かりづらいものが多いですが、この条文は比較的読みやすい印象です。まずは柱書部分で、自家用自動車で有償旅客運送を行うことを原則禁止しています。これはいわゆる「白タク」行為といわれるものです。「白タク」というのは、ナンバーの色から来ています。
自動車によって誰かを有償で輸送する場合,道路運送法に基づく許可を受けることが基本です。許可されて運行される車両は「緑ナンバー」(事業用自動車)となり,自家用車の「白ナンバー」(自家用自動車)とは明確に区分されています。
自家用有償旅客運送ってなんですか? | 地域公共交通のトリセツ(取組説明書) (kotsutorisetsu.com)
つまりタクシーのような緑ナンバーに対して、自家用自動車である白ナンバーでタクシーまがいの有償旅客運送を行うことを「白タク」行為と言い、これは犯罪です。
確かに白タク行為そのものは、一見すると窃盗や傷害などのように他人を傷つけたり迷惑を掛けているわけではないので、なぜ犯罪になるのかと思う方もいるかもしれません。でも考えてみてください、営業許可を受けているわけでもない、どこの馬の骨かもわからない他人が運転する車に乗るわけです。「飲酒運転だったら?」「無免許だったら?」「法外な料金を請求されたら?」など、車は走る密室のようなものですから、想像しただけでも怖いですよね。また、タクシーに乗りたいお客様が安心して乗れるように、お上の許可を得て営業しているのがタクシー業者です。そのような、正規のタクシー営業を阻害することにもなりますから、やはり白タク行為は迷惑ということになります。
ちなみに道路運送法の目的は、下記のようになっています。
第一条 この法律は、(中略)輸送の安全を確保し、道路運送の利用者の利益の保護及びその利便の増進を図るとともに、道路運送の総合的な発達を図り、もつて公共の福祉を増進することを目的とする。
道路運送法 | e-Gov法令検索
そして、この「白タク行為の原則禁止」には、3つの例外があります。それが上記の78条1号、2号、3号であり、このうち3号に当たる一つのケースとして、いわゆる「日本版ライドシェア」が認められているというわけです。
なぜライドシェアを認める必要があったのか?
しかし先ほどもお話しした通り、自家用自動車での有償旅客運送は様々なリスクを孕んでいます。そのために原則としては禁止されている行為なのに、なぜわざわざ認める必要があったのでしょうか?
その背景には、昨今の深刻な「タクシー不足」があります。まずはこちらの内閣府のデータを見てください。
https://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kisei/meeting/wg/2310_05local/240311/local01_03.pdf
これは地域ごとの配車マッチング率のデータです。
そして
このマッチング率が90%未満になるとタクシーの台数が不足していると判断されます。
ライドシェア 東京都内でサービス開始 神奈川愛知京都も 大阪は 運行時間・料金・安全は 配車アプリで利用 | NHK | 自動車
上記の内閣府のデータでは、いずれの地域・時間帯においても90%を超えておらず、タクシーの台数が不足していると言えます。これがタクシー不足の現状です。
タクシー・ハイヤー業界では、コロナ禍による移動制限の緩和に伴う観光やビジネスの移動需要が急速に高まった。また、全国各地で初乗り料金の上限が引き上げられるなど実質的な値上げも背景に客単価が上昇した企業は多く、タクシー需要に強い追い風が吹いている。
「全国タクシー・ハイヤー業界」動向調査 (tdb.co.jp)
ただ、足元ではコロナ禍で同業他社や他業界に転職・離職した従業員が戻ってこないほか、コロナ禍での収入減といったマイナスイメージから「若手(新人)の応募が来ない」といった企業も散見された。
つまり、コロナ禍で外出機会が激減し、タクシーの需要が底を打ち人手が減ったため、その後に訪れたアフターコロナで外出も増えインバウンドも急増している需要に対応しきれていないということです。
今日の記事の基本であるライドシェアについて理解できたところで、次はニュースの主役であるnewmoについて見ていきましょう。
newmoってどんな会社?
会社のHPには下記のように紹介されています
会社概要
newmoは今年の1月に創業したばかりの「タクシー事業」と「ライドシェア事業」の双方を展開する会社です。
会社設立日は2024年1月4日となっているのですが、ライドシェアが解禁されることとなったのは2023年12月20日ですから、当該リリースからわずか2週間で会社を設立したことになります。最強のフッ軽と言えるのではないでしょうか。やはり社会を変えていくにはこれほどのスピード感が必要なのですね。
なぜ大阪なのか?
2024年7月現在、国内でライドシェアが認められている地域は15ありますが、newmoはその中でも大阪を中心に事業を展開しています。具体的には下記のような取り組みを進めています。
newmo、大阪市域交通圏にてタクシー事業を展開する岸交に資本参加 2024年秋に大阪でライドシェア事業を開始
newmo、大阪市域交通圏にてタクシー事業を展開する岸交に資本参加 2024年秋に大阪でライドシェア事業を開始 | newmo株式会社のプレスリリース (prtimes.jp)
newmo、大阪に事業拠点を開設
newmo、大阪に事業拠点を開設 | newmo株式会社のプレスリリース (prtimes.jp)
そして本日の解説記事も大阪のタクシー会社の買収です。その背景にあるもの、それは、来年に迫った大阪万博です。
2025年に予定している大阪・関西万博では約2,800万人の来場者により、開催期間中に1日最大約2,200台のタクシーが不足することが懸念されています(※大阪府 2024年3月12日「報道発表資料 国土交通省への提案について」)newmoは交通需要の高まりが予測される大阪において、万博開催に先駆けたライドシェアサービスの展開を目指します。
newmo、大阪に事業拠点を開設 | newmo株式会社のプレスリリース (prtimes.jp)
まとめ
今回の解説のまとめは下記の通りです。
- アプリ開発スタートアップのnewmoが大阪のタクシー会社を買収したよ
- 深刻なタクシー不足を解消するべく、国は今年の4月からライドシェアを認めたよ
- newmoは大阪万博でのタクシー需要を見据えて、大阪を中心に事業を拡大しているよ
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