日経は難しい?
「若者の活字離れ」と言われることがあります。私はもう30代なので若者の括りからは外れそうな勢いですが、漫画と共に育ってきた我々にとって、文字だけを読むのってちょっと敷居が高いですよね。
ではなぜ活字を読むのは難しいのか?それは、文字を読むことそのもの以上に、書いてある内容に対する前提知識が不足していることが原因です。極端な話ですが、いくら平易な内容であってもアラビア語で書いてある文章は読めないですよね。それはアラビア語に対する知識が不足していることが原因です。また、自分が興味のある内容であれば、スラスラ読めたりしますよね?好きな子のSNSの投稿とか、多少長くても頭にすっと入ってくるはずです。
以上より、日経を読もうと息巻いたのに、ちょっと読んだら
となってしまうのは、「活字が苦手だから」ではありません。単純に書いてある記事の前提知識が足りていないだけです。
かく言う私も、ぶっちゃけ日経読んでて理解できないことの方が多いです。そこで、日経の記事に書かれている内容の前提知識をぶたくん、くまくんと一緒に整理し、スラスラと日経を読めるようになっていきましょー!
今日の解説記事
パートらの厚生年金加入、企業規模要件を撤廃 厚労省
パートらの厚生年金加入、企業規模要件を撤廃 厚労省 – 日本経済新聞 (nikkei.com)
厚生年金ってなに?
厚生年金とは何か、をお話しする前に、根本から考えていきましょう。
そもそも「年金」とは何なのでしょうか。制度としての意味ではなく、日本語の言葉としての意味は
終身または一定期間にわたり、毎年定期的に一定の金額を給付する制度のもとで、支給される金銭。
年金(ねんきん)とは? 意味・読み方・使い方をわかりやすく解説 – goo国語辞書
ちなみに「年金」と対になる概念は「一時金」です。一時金は読んで字のごとく、給付すべき金銭を一撃で受け取る形式のことを言います。例えば会社を辞める際の「退職金」は、退職時にドカンとまとまったお金を受け取るというイメージがあるかと思いますが、それ以外にも退職後の一定期間にわたって受け取ることもできたりします。前者を「退職一時金」と呼び、後者を「退職年金」と呼びますね
次に、日本における制度としての年金について考えていきます。年金の種類については、下記のようになっています。
大きくは「公的年金」、「私的年金」の2種類に分類できます。
- 公的年金:国民年金や厚生年金など。国が運営している年金を指し、条件に応じて必ず加入しなければならない
- 私的年金:国ではなく企業や個人が老後の生活に備えて準備する年金のことです。私的年金に入ることは義務ではないため、導入していない企業もあり、個人でも入るかどうかを任意で選択できます。
日本の年金制度は「3階建て」の構造をしています。基本的な構造は、1階が基礎となる「国民年金」、2階が企業などに所属した場合に加入する「厚生年金」、3階が任意で入る「私的年金」です。
(参考)年金の種類って?公的年金・私的年金についてそれぞれ解説! | オリックス銀行 (orixbank.co.jp)
ちなみに私的年金には、「企業年金」や「確定拠出年金(いわゆるDC)」、民間の保険会社が売っている「個人年金保険」などがあります。
厚生年金の制度的な位置づけが分かったところで、今回のニュースの主題である、加入義務について考えていきましょう。
公的年金の加入義務
日本国が運営する年金については、法律で加入義務が定められています。
国民年金の加入義務
国民年金法88条により、被保険者は保険料を納付しなければならないとされています。国民年金の被保険者とは、「日本に住んでいる20歳以上60歳未満の方は、すべて」です。
ちなみに、後述の厚生年金に加入した場合、同法7条1項2号のいわゆる「第二号被保険者」として国民年金にも加入することとなりますが、同法第94条の6により国民年金保険料を払う必要はありません。これは加入している厚生年金保険が国民年金の費用を負担しているからです。
厚生年金の加入義務
厚生年金の加入義務については、要件が複雑であり、詳細に書き始めると要旨が分かりにくくなるので、ざっくり説明します。(詳細に知りたい方は日本年金機構のHPをご覧ください。下記の説明は、こちらのHPを参考に私なりにまとめたものになります。)
厚生年金の加入義務
- ざっくり会社で稼働日の3/4以上働いている人。イメージとしては正社員
- ざっくり会社で稼働日の3/4以上働いてない(アルバイトやパート)けど、一定の要件を満たす人。こういった人のことを「短時間労働者」という。
正社員が厚生年金に加入するというのは問題ないでしょう。ここで問題になってくるのは「短時間労働者」になるため(=厚生年金に加入するため)の一定の要件の部分です。
一言で言うと「正社員ほどじゃないけど結構働いてる」ということなのですが、それに加えて「ある程度の規模の会社」で働いていることが前提となっています。「ある程度の規模の会社」は法律上の言葉では「特定適用事業所」と呼ばれていて、本記事の投稿時点(令和6年6月)では、101人以上の規模となっています。つまり100人以下の規模の会社では、原則として、結構働いているバイトは厚生年金に入れないのです。
そこで、厚生年金に入りたくても入れないという人が、勤務先の規模とかいう自分ではどうしようもできない事情で不公平感を感じないように、「会社規模に関わらず、バイトでも結構働いてれば厚生年金に入れるようにしよう!」というのが今日の記事の内容です。
社会保険に加入することは有利なのか?
社会保険の適用範囲は拡大している
本記事は厚生年金にフォーカスしていますが、健康保険なども含めたいわゆる「社会保険」の加入義務も同様です。この社会保険の適用拡大は、近年のトレンドとなっています。例えば前述の「特定適用事業所」の企業規模は段階的に拡大されています。
短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用の拡大|日本年金機構 (nenkin.go.jp)
では、なぜ拡大する必要があるのでしょうか?
社会保険適用範囲拡大の背景にあるもの
社会保険適用拡大が必要な理由のひとつに、昨今の時代背景があります。(中略)様々な要因により、非正規雇用者が増えています。しかし、非正規雇用の場合、待遇面で正規雇用とさまざまな差が生じるケースがあり、特に影響が大きいのが社会保険加入へのハードルです。
社会保険適用拡大は、非正規雇用者が正規雇用者と同様の社会保障が受けられていないという状況を改善し、より多くの労働者の社会保障を手厚くするために必要なのです。
「2022年10月より社会保険適用が拡大!企業に求められる対応と役立つ支援とは?」コラム|三菱電機ITソリューションズ (mdsol.co.jp)
バイトやパートといった非正規雇用者にも社会保障を手厚くするということが背景となっています。
ここで、そもそも国民年金と厚生年金って、制度内容としてどう違うのでしょうか?そんなに厚生年金ってよいのでしょうか?あんまり変わらないんだったら、わざわざ頑張ってまで厚生年金に入る必要もないのではないですよね。最後に国民年金と厚生年金の違いを考えてみましょう。
比べて分かった、やっぱり厚生年金はオイシイ
前述しましたが、厚生年金の加入者は国民年金にも加入しています。この時点で厚生年金は国民年金の完全上位互換と言えます。では具体的にどう違うのか?違いは多数あるのですが、私の考える国民年金と比べた場合の厚生年金の大きなメリットは以下の3つです。
- 厚生年金は、会社が半分払ってくれる
- 「扶養」という制度がある。国民年金にはない。
- 厚生年金よりも見返りが大きい
3点目については、単純比較が難しいのですが、一例をあげると
- 国民年金
20歳〜60歳で合計792万9600円の保険料を支払う
→65歳から30年間で合計2385万円の老齢基礎年金をもらえる
- 厚生年金(国民年金含む)
20歳〜60歳で合計1317万6000円の保険料を支払う
国民年金・厚生年金の「一生涯の」保険料と年金額はどのくらい?|タマルWeb|イオン銀行 (aeonbank.co.jp)
→65歳から30年間で合計4752万7920円の老齢厚生年金をもらえる
となります。上記のケースで考えると、支払った保険料に対する受け取る年金の倍率は
- 国民年金:2385/792.96=3.0倍
- 厚生年金:4752.7920/1317.6000=3.6倍
であり、厚生年金の方が有利であると言えそうです。
まとめ
国民年金より厚生年金の方がお得だよ!だけど現状は勤務先の規模によって、同じように働いているバイトでも厚生年金に入れたり入れなかったりするから不公平が生じてるよ、だから勤務先の規模要件は取っ払って、公平にしていこうね。そして非正規雇用者に社会保障を提供しようね。
という記事でした。頑張った人が公平に報われる、そんな社会になるための一歩ですね。
コメント